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2025年度需給調整市場の売買手数料は3倍に!背景とポイントを解説

みなさん、こんにちは。グリッド研究所の所長を務めるまるおと申します。本日のテーマは、2025年度の需給調整市場における売買手数料単価が3倍に上昇した背景とポイントについて、解説してみたいと思います。
算定式 出典: 2025年度需給調整市場売買手数料単価の見通しについて

売買手数料はなぜ「3倍」になったのか

2024年度までの単価は0.02円/ΔkWh(税抜)で、30分単位では0.01円/ΔkW・30分(税抜)に相当します。一方、2025年度の単価は0.06円/ΔkWh(税抜)となり、30分単位では0.03円/ΔkW・30分(税抜)に相当します。つまり、これまで1時間あたり「0.02円」だった単価が、2025年度からは「0.06円」となり、実質的には3倍の引き上げとなります。
3倍 出典: 2025年度需給調整市場売買手数料単価の見通しについて

手数料上昇の主な要因

システム関連費用の増大

三次調整力②の30分ブロック化など、市場制度に合わせたシステム改修費用が大幅に上昇。 保守コストや減価償却相当額も加わり、従来より高い運営費用が必要となっています。

約定量の見通し下振れ

2025年度の調整力約定量を、2024年度実績を踏まえて再設定したところ、当初見込んでいたより大幅に少なくなる見通し。 結果として、同じ費用を回収するには1ΔkWあたりの単価を上げざるを得ない状況です。

過去の不足分の反映

2023年度の収支実績で赤字(不足)が発生し、これを2025年度単価に上乗せするルールとなっています。 不足分が大きいほど手数料単価も引き上げられるため、3倍という大幅アップの要因となりました。

業界への影響は?

今回の手数料引き上げは、調整力を取引する売り手・買い手の双方にコスト増としてのしかかります。
売り手(調整力を提供する事業者): 取引するたびにかかる手数料が増えることで、参加コストの上昇につながります。 買い手(一般送配電事業者): 同様に手数料を負担する仕組みのため、調整力確保コストの上昇となり、最終的には電気料金にも影響が及ぶ可能性があります。 もっとも、需給調整市場全体を安定運営するためにはシステムの拡充が欠かせません。手数料の上昇には痛みが伴いますが、高品質かつ柔軟な調整力確保という面で長期的に意義があると見る向きもあるでしょう。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回の資料からは、火力発電所の老朽化や退出が進むなかで、調整機能を持つ蓄電池の重要性がますます高まることが改めて浮き彫りになりました。 制度の見直しや新技術の導入が進むと、容量市場の結果にも影響が出てくると考えられます。私たちグリッド研究所としては、これからも業界動向をしっかりウォッチし、皆さまにタイムリーで分かりやすい情報をお届けしてまいります。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

参考資料